Ethereum Classic(イーサリアムクラシック)
2016 年 The DAO ハック後のハードフォーク拒否派が継続する PoW ブロックチェーン。「Code is Law」不可変性原則を掲げるが、51% 攻撃(2019-2020)により安全性の脆弱性が露呈した。
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Ethereum Classic(ETC)は 2016 年の The DAO 事件に端を発する Ethereum のハードフォーク拒否派が維持するブロックチェーンである。「Code is Law」——スマートコントラクトのコードが法であり、その実行結果は不可変——という原則を掲げ、Ethereum(ETH)が状態ロールバックを実施した後もオリジナルのチェーンを継続した。現在は Proof of Work(Etchash)で稼働する EVM 互換チェーンだが、2019〜2020 年に複数回の 51% 攻撃を受け、セキュリティ面での限界が問われている。情報カットオフ ~2025-08、confidence: medium 固定(2026-06 時点での外部再検証は未実施)。
由来 — 2016 年 The DAO 事件とフォーク
2016 年 6 月、Ethereum 上の分散型 VC ファンド「The DAO」が reentrancy 脆弱性を突かれ、当時約 6,000 万ドル相当の ETH が不正に引き出された。Ethereum コミュニティは長い議論の末、ハードフォーク(状態変更)を実施して資金を正規保有者に返還することを選択した(ETH チェーンの誕生)。
しかし一部のコミュニティメンバーは「たとえコードにバグがあっても、ブロックチェーンの不可変性はその結果を尊重すべき」としてフォークを拒否し、オリジナルチェーンの維持を選んだ。このチェーンが Ethereum Classic(ETC)として継続し、独自のティッカーシンボル・コミュニティ・開発チームを形成した。分裂当初は多くのマイナーが ETH 側に流れたが、ETC は独立したコミュニティとして存続した。
理念 — Code is Law と不可変性
ETC の根幹思想は**不可変性(immutability)**の絶対視である。「コードがルールであり、人間による介入は分散型システムの本質を損なう」という立場から、ETH のフォークは中央集権的な意思決定だと批判する。
この理念は暗号学者・思想家の Nick Szabo や David Chaum に遡るサイバーパンク精神とも親和性が高い。「信頼を機関ではなくコードに置く」という設計原則を最も厳格に解釈した立場といえる。ただし、「不可変性を守るため被害者の損失を容認すべきか」という倫理的問いに対する答えはコミュニティ内でも一様ではなく、ETC 支持者の間でも多様な見解がある。
技術仕様 — PoW 継続と EVM 互換性
ETC は Ethereum と分岐した時点の EVM 仕様を起点として発展しており、EVM 互換性を維持している。主な技術的特徴は以下の通りである。
コンセンサス:ETC は Ethereum が The Merge(2022-09)で廃止した Proof of Work を継続する。当初の Ethash アルゴリズムから、ASIC 耐性を高めるため Etchash(DAG サイズを Ethash より小さくし ASIC の参入障壁を維持する変種)へ移行した。
発行モデル:ETC は Bitcoin 同様の固定発行スケジュールを持ち、約 5 年ごとに発行量が 20% 削減(ECIP-1017)される。総供給上限は約 2 億 1,000 万 ETC とされる。
EVM 互換性:Solidity で記述されたスマートコントラクトを ETC 上にデプロイ可能だが、Ethereum との状態は 2016 年以降分岐しており、同一コントラクトアドレスが存在しても異なる状態を持つ。DeFi や NFT エコシステムは ETH に比べ著しく小規模である。
51% 攻撃とセキュリティ問題
ETC の最大の課題は51% 攻撃への脆弱性である。PoW チェーンの安全性はネットワーク全体のハッシュレートに依存し、ハッシュレートが低いチェーンほど攻撃コストが低下する。ETC は ETH 本流のマイナーが PoS に移行した結果、市場でレンタル可能なハッシュレートが大量に余剰となり、攻撃者が短期間に ETC のハッシュレートを上回ることが可能となった。
- 2019 年 1 月:二重支払い攻撃。複数取引所が被害を受け、約 100 万ドル相当の ETC が二重支払いされた。
- 2020 年 8 月:3 回の 51% 攻撃が連続して発生。1 回目(2020-08-01)は深さ 3,693 ブロックの再編成という大規模なもので、OKEx が ETC の入金を一時停止した。
対策として ETC は MESS(Modified Exponential Subjective Scoring) と呼ばれる再編成耐性アルゴリズムを導入し(2020-10)、深い再編成のコストを指数的に増加させる仕組みを採用した。ただしこれは抜本的解決ではなく、ハッシュレートが低いという根本問題は解消されていない。
Ethereum 本流との比較
| 観点 | Ethereum(ETH) | Ethereum Classic(ETC) |
|---|---|---|
| コンセンサス | Proof of Stake(Gasper) | Proof of Work(Etchash) |
| 起源 | The DAO フォーク後チェーン | The DAO フォーク前オリジナル |
| 設計思想 | プラグマティック・継続改善 | Code is Law・不可変性重視 |
| エコシステム規模 | 最大規模の dApp/DeFi/NFT | 小規模 |
| セキュリティ | 高(PoS + 大量バリデータ) | 低(51% 攻撃リスク) |
| アップグレード速度 | 頻繁(EIP 駆動) | 保守的 |
| 時価総額(2025 年時点) | 2 位 | 中〜小規模 |
2025 年時点での時価総額は 2026-06 時点で外部再検証ができていないため具体数値は省略する。Ethereum との差は非常に大きく、エコシステム・開発者数・流動性のいずれも ETH が圧倒している。
まとめ — ETC の位置づけ
ETC は「ブロックチェーンの不可変性」という原則に最も忠実なチェーンとして、一部の暗号資産支持者から哲学的に評価される。Bitcoin と類似した固定発行スケジュールと PoW の継続もこの文脈で評価される側面がある。一方で、51% 攻撃への脆弱性・エコシステムの縮小・ETH との競争という現実は、実用プラットフォームとしての採用を限定している。ETC の歴史は、ブロックチェーンのガバナンスにおける「コードの不可変性」と「コミュニティの意思決定」の緊張関係を示す最も著名な事例として参照され続けている。
Backlinks
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