プロトコル改善提案(BIP・EIP)とフォーク

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Created: 2026-06-07 Updated:

BIP(Bitcoin)・EIP(Ethereum)のプロセスと主要提案(EIP-1559・EIP-4844・EIP-7702)、ソフトフォーク vs ハードフォーク、歴史的ガバナンス事例(The DAO 分裂・SegWit/UASF・Taproot・The Merge)を体系化。

プロトコル改善提案(BIP・EIP)とフォーク

Bitcoin と Ethereum はオープンソースのパブリックネットワークであり、「誰がどのようにプロトコルを変更するか」は技術と政治の交差点にある。BIP(Bitcoin Improvement Proposal)と EIP(Ethereum Improvement Proposal)は、コミュニティの合意形成プロセスを文書化する標準的な経路だ。本記事はその仕組み、主要な提案内容、ソフトフォーク vs ハードフォーク、歴史的ガバナンス事例を体系化する。情報カットオフ ~2025-08、confidence: medium 固定(2026-06 時点での外部再検証は未実施)。

BIP(Bitcoin Improvement Proposal)のプロセス

BIP は Python Enhancement Proposal(PEP)を参考に 2011 年に導入された。提案者は BIP 文書を GitHub へ提出し、BIP エディター(現在は複数名)がレビューして番号を割り当てる。BIP の種類は 3 つに分類される。

分類説明
Standards Trackプロトコルや相互運用性を変更するBIP-141(SegWit)・BIP-341(Taproot)
Informational設計指針や情報を提供する(変更なし)BIP-32(HD Wallet)
ProcessBIP プロセス自体を変更するBIP-2(BIP プロセス改定)

BIP の最終採用にはマイナー・ノード運営者・ウォレット開発者のコンセンサスが必要であり、投票機構はない。Bitcoin Core のメンテナーが実装を受け入れるかどうかも重要な変数だ。コンセンサスが取れない場合はフォークに至る(後述)。

EIP(Ethereum Improvement Proposal)のプロセス

EIP は 2015 年に導入された。主なカテゴリは以下の通り。

カテゴリ内容
Coreコンセンサス層の変更(ハードフォーク必要)EIP-1559・EIP-4844
NetworkingP2P プロトコルの変更devp2p 改善
InterfaceAPI / RPC 仕様
ERCアプリケーション層標準(トークン・ウォレット等)ERC-20・ERC-721・ERC-4337
Metaプロセス・ガイドライン

EIP はEthereum Magicians フォーラムでの議論 → AllCoreDevs(ACD)ミーティングでの合意 → ハードフォーク(ネットワークアップグレード)という経路で採用される。Ethereum は計画的なハードフォークを定期実施し(Cancun・Dencun・Prague/Electra 等)、後方互換性のない変更を段階的に導入する。

主要な EIP

EIP-1559(London ハードフォーク、2021 年 8 月)は Ethereum の手数料市場を根本的に変更した。従来の入札型ガスオークション(最高入札者勝利)から、**base fee(プロトコルが自動設定・全額バーン)+ tip(マイナーへのインセンティブ)**のモデルに移行した。base fee がバーンされることで ETH は「デフレ資産」としての性質を帯び、経済モデルが変わった。

EIP-4844(Dencun ハードフォーク、2024 年 3 月)は「proto-danksharding」として知られ、L2 ロールアップがデータを格納するためのblob トランザクション(type 3)を導入した。blob は calldata より安価で、一定期間後に自動削除されるため、L2 の DA コストを 10 倍程度削減した。Danksharding への段階的移行の第一歩である。

EIP-7702(Prague/Electra ハードフォーク、2025 年予定)は EOA(外部所有アカウント)に一時的にコードを持たせる仕組みを導入する。ウォレットが 1 トランザクション内でスマートアカウント機能(バッチ実行・ガスレス・委任)を使えるようになる。ERC-4337 とは異なり既存の EOA のまま活用できる点が特徴だ。

ソフトフォーク vs ハードフォーク

**ソフトフォーク(Soft Fork)**は後方互換のあるプロトコル変更で、旧バージョンのノードが新バージョンのブロックを有効とみなせる。新規則は「旧ルールのサブセット」として設計されるため、アップグレードしていないノードも同じチェーンに残れる(ただし新機能は使えない)。Bitcoin の SegWit(2017)・Taproot(2021)はソフトフォークで実施された。

**ハードフォーク(Hard Fork)**は後方非互換の変更で、旧ノードが新ブロックを無効と判断するため、ネットワークが分岐する。全ノードが同時にアップグレードしなければ 2 本のチェーンが走り続ける。Ethereum は定期的にハードフォークを計画的に実施しており、バリデータの大多数が従うため通常は単一チェーンが維持される。

歴史的ガバナンス事例

The DAO 分裂(2016)と Ethereum / Ethereum Classic

2016 年 6 月、「The DAO」と呼ばれる分散型ベンチャーファンドのスマートコントラクトが再帰呼び出し(Reentrancy)脆弱性を突かれ、360 万 ETH(当時約 6,000 万ドル)が流出した。Ethereum コミュニティはハードフォークで流出 ETH を移動させる不可逆的介入を可決した(賛成多数)。これが「コードは法律か、人間の判断が優先されるか」という哲学的対立を生んだ。ハードフォークに反対したグループは旧チェーンを継続し、**Ethereum Classic(ETC)**として現在も存続している。

SegWit / UASF(2015–2017)

Bitcoin のブロックサイズ論争は 2015 年頃から激化した。SegWit(Segregated Witness:BIP-141)はトランザクション展性問題の解決と実質的なブロック容量拡大を両立するソフトフォーク提案だったが、大規模マイニングプールはブロックサイズ直接増大(ビッグブロック派)を要求した。ユーザーが主導した **UASF(User Activated Soft Fork / BIP-148)**は「マイナーが SegWit を採用しなければユーザー側がノードをアップグレードして強制する」という異例の手段で圧力をかけた。最終的に SegWit は 2017 年 8 月に有効化され、ビッグブロック派は Bitcoin Cash へハードフォークした。

Taproot(2021)

Taproot(BIP-340/341/342)は Schnorr 署名・MAST(Merkelized Abstract Syntax Trees)・Tapscript を組み合わせたソフトフォークで、スクリプトのプライバシーと効率性を大幅に改善した。Speedy Trial と呼ばれる採用メカニズムで 90% 以上のマイナーがシグナリングした後にロックインされ、2021 年 11 月に有効化された。SegWit 論争の反省から、より協調的なプロセスで採用された。

The Merge(2022)

Ethereum は 2022 年 9 月 15 日、PoW マイニングから PoS バリデーターへのコンセンサス移行(The Merge)を完了した。Paris ハードフォーク(実行層)と Bellatrix アップグレード(コンセンサス層)が同時に適用され、ターミナル総難易度(TTD)到達でチェーンがシームレスに切り替わった。エネルギー消費を約 99.95% 削減し、PoS 移行は Ethereum のロードマップ上最大のマイルストーンとなった。PoS の詳細は tech-205 を参照のこと。

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