オンチェーンデータ分析

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Created: 2026-06-07 Updated:

Dune Analytics・Nansen・Chainalysis・Arkham のオンチェーン分析ツール、DefiLlama による TVL 指標、Etherscan などのブロックエクスプローラを体系化。データ駆動型チェーン分析の基礎。

オンチェーンデータ分析

ブロックチェーンは全取引を公開台帳に記録するため、データ分析の観点から極めてユニークな特性を持つ。誰でもオンチェーンデータを読み取れる一方、分析ツールがなければ膨大なトランザクションデータから意味のある洞察を引き出すことは困難である。本記事は Dune Analytics・Nansen・Chainalysis・Arkham というオンチェーン分析プラットフォームの特性、DefiLlama による DeFi 指標の標準化、Etherscan などのブロックエクスプローラの役割を整理する。情報カットオフ ~2025-08、confidence: medium 固定(2026-06 時点での外部再検証は未実施)。

Dune Analytics:コミュニティ主導の SQL 分析

Dune Analytics は 2019 年設立のオンチェーンデータ分析プラットフォームで、SQL クエリを通じてブロックチェーンデータを自由に分析・可視化できる環境を提供する。

主な特徴:

  • SQL インターフェース:Ethereum・Polygon・Arbitrum・Optimism・Solana など主要チェーンのトランザクション・イベントログデータを標準 SQL で照会可能
  • コミュニティダッシュボード:分析クエリはパブリックで共有・フォーク可能。DEX 取引量・DeFi プロトコル別流動性・NFT マーケット動向など、数万のコミュニティ作成ダッシュボードが公開されている
  • Dune Spellbook:dbt(data build tool)ベースのモデル層で、よく使われるテーブルを標準化されたビューとして提供(例:dex.tradesnft.trades テーブル)
  • API アクセス:プログラマティックなデータ取得が可能で、プロジェクトの分析パイプラインに組み込める

Dune は「データ民主化」のコンセプトを掲げており、専門的なデータエンジニアでなくても SQL の基礎知識があれば分析を構築できる点が強みである。2021〜2022 年の DeFi・NFT ブームで急成長し、ユニコーン評価額に達した(情報カットオフ時点)。

Nansen:ウォレットラベリングと「スマートマネー」追跡

Nansen はウォレットアドレスへの人工知能ラベリングを核とするオンチェーン分析プラットフォームである。数百万のウォレットを「中央集権型取引所」「VC ファンド」「DEX トレーダー」「NFT コレクター」「マイナー」などのカテゴリに分類し、資金フローのコンテキストを提供する。

主な機能:

  • スマートマネー追跡:過去の取引成績に基づき「スマートマネー」ウォレット(高利回りを継続的に達成した投資家)を識別し、その動向をリアルタイムで追跡する。スマートマネーが購入するトークンは市場の注目指標として機能する
  • Token God Mode:特定トークンのホルダー分布・機関保有比率・ウォレット種別内訳を可視化
  • NFT Wallet Profiler:NFT コレクションの保有者属性(早期入手者・フリッパー・長期保有者)を分析
  • DEX 分析:Uniswap・Curve などの分散型取引所における流動性・スワップパターンを監視

Nansen はプレミアムサブスクリプション型(月額数百ドル)であり、主に機関投資家・ヘッジファンド・VC が利用する。日本語インターフェースは情報カットオフ時点で未対応。

Chainalysis と Arkham:法執行・規制コンプライアンス向け分析

Chainalysis は法執行機関・金融機関・VASP 向けに特化したオンチェーン調査・コンプライアンスプラットフォームである(関連:tech-251 暗号資産 AML・KYC コンプライアンス)。

主な製品:

製品用途
Chainalysis Reactor複雑なマネーロンダリング・詐欺ネットワークの可視化調査
Chainalysis KYT (Know Your Transaction)VASP 向けリアルタイムトランザクション監視・リスクスコアリング
Chainalysis Market Intel資金フロー・市場動向の分析

FBI・DEA・EU 当局などの法執行機関がランサムウェア追跡・ダークウェブマーケット関連資金追跡に活用している実績がある。

Arkham Intelligence は 2022 年に創業した分析プラットフォームで、AI を用いてウォレットアドレスを実際の個人・組織と紐付ける「ドキシング」的な手法を採用している点で論争を呼んだ。2023 年の ARKM トークン発行時に「情報を売買するバウンティ市場(Intel Exchange)」を立ち上げ、プライバシーコミュニティから強い批判を受けた。一方で、ハッキング事件後の資金追跡・詐欺師の特定においてリアルタイムの公開調査(OSINT)ツールとしての役割を果たしている。

DefiLlama と TVL:DeFi 指標の標準

TVL(Total Value Locked)は DeFi プロトコルの規模を測る最も基本的な指標で、プロトコルのスマートコントラクトに預けられている資産の総価値(USD 換算)を示す。「どれだけ信頼されているか・利用されているか」の代理指標として機能する一方、価格上昇で TVL が増加するためレバレッジのかかった過大評価が生じやすい点に留意が必要である。

DefiLlama はオープンソースの DeFi データ集約プラットフォームで、DeFi 分野の事実上の TVL 標準データソースとなっている。

主な機能・指標:

  • チェーン別 TVL:Ethereum・Solana・BNB Chain・Arbitrum・Polygon などのエコシステム比較(クロスチェーン TVL のダブルカウント問題に対応した補正値も提供)
  • プロトコル別 TVL:Lido・Aave・Uniswap・Curve など個別プロトコルのランキング・時系列推移
  • DEX 取引量:分散型取引所の 24h/7d 取引量比較
  • Stablecoin ダッシュボード:ステーブルコイン別の発行量・チェーン分布
  • 手数料・収益(Fees & Revenue):プロトコルが生成する手数料収益の透明な比較。VC 評価との乖離を測る「実需の指標」として投資家・リサーチャーが活用

DefiLlama は広告収入モデルで無料提供されており、データは GitHub でオープンソース公開されている点が信頼性向上につながっている(PR によるプロトコル追加・訂正が可能)。

ブロックエクスプローラ:Etherscan と代替ツール

ブロックエクスプローラはブロックチェーンの取引・ブロック・アドレス・スマートコントラクトを閲覧するための検索インターフェースである。

Etherscan(etherscan.io)は Ethereum の代表的なブロックエクスプローラで、2015 年の Ethereum メインネット立ち上げ時から運営されている。EVM 互換チェーンにも展開しており、Arbiscan(Arbitrum)・Polygonscan(Polygon)・BSCscan(BNB Chain)などの姉妹サービスを運営する。

Etherscan の主要機能:

  • トランザクション詳細(ハッシュ・タイムスタンプ・ガス代・入力データのデコード)
  • アドレス残高・取引履歴の公開照会
  • スマートコントラクトのソースコード検証(Verified Contracts — 監査済みコントラクトの確認に必須)
  • ERC-20/ERC-721/ERC-1155 トークントランスファーの追跡
  • ガス価格トラッカー(現在のベースフィー・優先フィー推移)

チェーン別主要エクスプローラ:

チェーン主要エクスプローラ
EthereumEtherscan
BitcoinMempool.space・Blockchain.com
SolanaSolscan・Solana Explorer(公式)
CosmosMintscan
AvalancheSnowTrace(Routescan)

オンチェーンデータの限界と解釈上の注意点

オンチェーン分析は透明性が高い一方、以下の解釈上の限界がある。

  1. 偽名性:ウォレットアドレスは公開されているが、実際の人物・組織への紐付けはラベリングツールの推定に依存し、誤帰属のリスクがある
  2. TVL のダブルカウント:担保として再利用される資産(Liquid Staking Tokens など)は複数のプロトコルに計上されるため、エコシステム全体の TVL 合計はダブルカウントを含む
  3. スマートマネーの遅延:パブリックな追跡ツールにウォレットが知られると、模倣売買が増加し「スマートマネー」シグナルの信頼性が低下する(ゲーム理論的劣化)
  4. オフチェーン要因:価格・流動性はオフチェーンの動向(規制発表・マクロ経済・CEX の注文フロー)に大きく左右されるが、これらはオンチェーンデータのみでは捕捉できない
  5. データ鮮度:インデックス遅延が数分〜数時間生じる場合があり、高頻度取引の判断には不向きである

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