Celestia(セレスティア)
実行・決済・DA・合意を分離する「モジュラーブロックチェーン」のDA専用レイヤー。Data Availability Sampling と Namespaced Merkle Trees で軽量クライアントがDA証明でき、主権ロールアップの基盤を提供。トークンは TIA。
article technology ja 実行・決済・DA・合意を分離する「モジュラーブロックチェーン」のDA専用レイヤー。Data Availability Sampling と Namespaced Merkle Trees で軽量クライアントがDA証明でき、主権ロールアップの基盤を提供。トークンは TIA。Celestia(セレスティア)
Celestia はブロックチェーンの機能を「実行(Execution)」「決済(Settlement)」「合意(Consensus)」「データ可用性(Data Availability: DA)」に分解し、DA と合意に特化したモジュラーブロックチェーンである。Ethereum のモノリシック設計(全機能を 1 チェーンで担う)とは対照的に、Celestia はデータをオーダーして公開することのみに集中し、他の機能は外部レイヤーに委ねる。2023 年 10 月にメインネットをローンチし、ネイティブトークンは TIA である。情報カットオフ ~2025-08、confidence: medium 固定(2026-06 時点での外部再検証は未実施)。
モジュラーブロックチェーンの概念
従来のブロックチェーン(Ethereum、Bitcoin、Cosmos チェーン)はすべて「モノリシック」設計で、1 つのチェーンが実行・決済・合意・DA を担う。この設計はシンプルだが、各機能がトレードオフを共有するためスケーラビリティに限界がある。
モジュラー設計はこれを分離する。Celestia の提案は次のとおりだ。
- DA レイヤー(Celestia 本体):トランザクションデータの公開と順序付けのみを担う。実行結果の正しさは検証しない。
- 実行レイヤー:Rollup またはアプリチェーンが独自に実行する。
- 決済レイヤー:Ethereum や Cosmos Hub など既存チェーンを利用する。
この分離により、DA レイヤーを専門的に最適化できる。Celestia は DA のスループットを最大化しながら、ノードの運用コストを抑えることに注力している。
Data Availability Sampling(DAS)
DA の問題は「ブロックデータが本当に公開されているか」をどう検証するかである。フルノードなら全データをダウンロードして確認できるが、それでは軽量クライアントには重すぎる。
Celestia の解決策が DAS(Data Availability Sampling) である。軽量クライアントはブロックデータの断片をランダムにサンプリングし、確率的にデータ全体の可用性を検証する。各サンプリングは独立しており、十分なサンプル数(例えば 75 回)を集めれば、欠損率が高いデータを高い確率で検出できる。
DAS を機能させるために Celestia は 2D Reed-Solomon 消去符号を採用する。ブロックデータを 2 次元行列に配置し、行と列にそれぞれ消去符号を適用することで、データの 75% が失われても元のブロックを復元できる。DAS と消去符号の組み合わせにより、軽量クライアントがネットワーク帯域をほとんど使わずに DA を検証できる。
Namespaced Merkle Trees(NMT)
Celestia のもう 1 つの核心技術が NMT(Namespaced Merkle Trees) である。通常の Merkle Tree では特定アプリのデータだけを効率よく抽出できないが、NMT ではデータブロックに「名前空間(Namespace)」を付与し、ツリーを名前空間でソートして構築する。
これにより Rollup や Celestia ベースのチェーンは「自分の名前空間のデータだけをダウンロードする」という操作が可能になり、DA 証明を名前空間単位で検証できる。このしくみが主権ロールアップの基盤となっている。
主権ロールアップと DA レイヤーとしての用途
**主権ロールアップ(Sovereign Rollup)**は Celestia を DA レイヤーとして利用しながら、決済と正当性検証を独自に行うロールアップである。Ethereum の Optimistic / ZK Rollup が決済を Ethereum に依存するのと対照的に、主権ロールアップは Celestia 上でデータを公開するだけで完全な独立性を持つ。フォークや設定変更もロールアップ側のコミュニティが自律的に決定できる。
実際の用途として、以下のようなケースがある。
- Rollkit:Celestia を DA レイヤーとして使う Cosmos SDK 互換の Rollup フレームワーク
- Dymension:Celestia を DA に使う RollApp(appchain rollup)ハブ
- Ethereum L2 の DA 代替:Ethereum EIP-4844(blob トランザクション)に加え、Celestia を DA として使うことでコストをさらに削減する L2 が登場している(情報カットオフ ~2025-08 時点)
Ethereum のエコシステムとの接続では、Blobstream(旧称 Quantum Gravity Bridge)を介して Celestia の DA 証明を Ethereum スマートコントラクトで検証できる。これにより Ethereum ベースの Rollup が Celestia を DA に使いながら Ethereum で決済できる。
TIA トークンと経済設計
TIA は Celestia のネイティブトークンで、以下の用途を持つ。
- Gas トークン:トランザクションデータ公開の手数料
- ガバナンス:プロトコルパラメータのオンチェーン投票
- ステーキング:バリデータへのデリゲート(PoS セキュリティ)
Celestia のブロックスペース価格はデータ量(バイト数)に基づいて決まり、実行ではなく DA に特化した手数料モデルを持つ。初期バリデータは 100 名で、Tendermint 系コンセンサス(CometBFT)を採用している(Cosmos エコシステム由来)。
Cosmos / Polkadot との関係
Celestia 自体は CometBFT ベースの Cosmos チェーンとして実装されており(tech-172 参照)、Cosmos SDK チェーンが DA レイヤーとして Celestia を採用するのは自然な選択だ。一方 Polkadot の Parachain(tech-173)においても、DA コストを Celestia に外部委託する研究が行われているが、採用状況は情報カットオフ ~2025-08 時点で限定的だった。
Ethereum との比較では、EIP-4844 の blob トランザクションが Ethereum 自身をある程度 DA に特化させた形だが、Celestia はより大きなブロックサイズと DAS によって Ethereum の blob より高スループットの DA を提供することを目標にしている。
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