非 EVM チェーンのトークンモデル

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Created: 2026-06-07 Updated:

EVM 以外のトークンモデルを比較。Solana SPL(高速・低費用)、Bitcoin 系(Ordinals・Runes・BRC-20)、Cosmos IBC トークン・Sui/Aptos オブジェクトモデルの設計思想と特徴を体系化。

非 EVM チェーンのトークンモデル(Solana SPL・Bitcoin Ordinals/Runes・他チェーン)

EVM(Ethereum Virtual Machine)は最大のスマートコントラクト生態系を持つが、世界のトークンすべてが EVM 上で動いているわけではない。Solana は独自の SPL トークン標準で高スループット・低コストを実現し、Bitcoin は Ordinals・Runes という後付けの方法でトークン性を獲得した。Cosmos・Sui・Aptos は異なるアーキテクチャからトークンモデルを設計した。本記事は EVM 外の主要トークンモデルの設計思想と実装を比較する。情報カットオフ ~2025-08、confidence: medium 固定(2026-06 時点での外部再検証は未実施)。

Solana SPL トークン

SPL(Solana Program Library)トークンは Solana 上の代替可能トークン標準であり、ERC-20 に相当するが、設計思想は大きく異なる。

Solana のアカウントモデルでは、データ(状態)とプログラム(コード)が分離されている。EVM では ERC-20 コントラクトが残高マッピングを内部に持つが、SPL トークンでは:

  • Mint Account:トークンの定義(supply・decimals・mint authority・freeze authority)を持つ単一アカウント
  • Token Account:各ユーザーの残高を保持する専用アカウント(1 ユーザー × 1 トークン = 1 Token Account)
  • Associated Token Account(ATA):ユーザーウォレットアドレスから決定論的に導出できる標準 Token Account

この設計により、残高更新が並列実行可能となり、Solana の高スループット(数万 TPS 規模)の一因となっている。一方で、新しいトークンを受け取る際に Token Account を事前作成(rent 支払い)する必要があるため、初回受取のガスコスト(約 0.002 SOL)が ERC-20 より高い。

SPL Token 2022(Token Extensions)はロイヤリティ・移転手数料・秘密保持残高・不可分性等の拡張機能を追加した新世代 SPL 標準で、2022 年末から Solana mainnet で利用可能になった。

Bitcoin 系トークンモデル

Bitcoin はスマートコントラクト機能を持たないが、2023 年以降に 3 つの主要なトークン付与手法が登場した。

Ordinals(2023 年 1 月)

Casey Rodarmor が考案したOrdinal Theoryは、Bitcoin の各 satoshi(最小単位 0.00000001 BTC)に通し番号(ordinal number)を付与し、UTXO の追跡ルールで所有権を管理する。Inscriptions はこの番号付き satoshi のトランザクション witness フィールドに任意データ(画像・テキスト・JSON 等)を「刻み込む」技術で、Bitcoin 上の NFT に近い機能を実現した。

Ordinals は Bitcoin コアプロトコルの変更を必要とせず、SegWit(2017 年)と Taproot(2021 年)の有効化後に可能になった witness フィールドの拡張を活用している。2023 年に急速に普及し、Bitcoin のブロックスペース需要と手数料収入を大幅に押し上げた。

BRC-20(2023 年 3 月)

BRC-20 は Ordinals の JSON Inscription を活用して Bitcoin 上に fungible token(代替可能トークン)を実装した実験的プロトコルである。deployminttransfer という 3 種類の JSON を Inscription することで、オフチェーンのインデクサーが残高を追跡する。スマートコントラクトを使わず、インデクサーの合意に依存する性質上、信頼モデルはオフチェーン計算に依存する。ORDI・SATS などのトークンが人気を博したが、スパム Inscription によるブロック肥大化の問題を引き起こした。

Runes(2024 年 4 月、Bitcoin halving 直後)

Runes は Casey Rodarmor が BRC-20 の問題点(インデクサー依存・UTXO 断片化)を解決するために設計した Bitcoin native の Fungible Token プロトコルである。OP_RETURN フィールドを使い、Bitcoin の UTXO モデルに直接組み込まれた残高管理を実現する。Ordinals のような witness フィールドへの大容量書き込みを排除し、UTXO の断片化を最小化する設計思想をとる。2024 年 4 月の Bitcoin halving(840,000 ブロック)でローンチされ、直後の数日間で Bitcoin 手数料を急騰させた。

Cosmos IBC トークンとネイティブトークン

Cosmos は IBC(Inter-Blockchain Communication)プロトコルを使って複数の独立チェーン(Zone / Hub)間でトークンを移転できる。各 Cosmos チェーンはネイティブトークン(ATOM / OSMO / INJ 等)を持ち、IBC 転送ではバウチャートークン(ibc/... プレフィックス)が発行される。

Cosmos SDK の x/bank モジュールが基礎的なトークン管理を提供し、x/tokenfactory モジュールで誰でもネイティブトークンを発行可能。EVM 互換性は CosmWasm(WebAssembly スマートコントラクト)または Ethermint(EVM 互換レイヤー)で実現する。

Sui・Aptos のオブジェクト/リソースモデル

SuiAptos はいずれも Move 言語を採用し、EVM とは根本的に異なる「オブジェクト中心」のモデルでトークンを表現する。

Sui ではトークンは Coin<T> という generic 型で表現され、Move のオブジェクト所有権モデル(各オブジェクトが所有者を持ち、所有者なしでは変更不可)によって型安全性が保証される。所有権が型システムで強制されるため、スマートコントラクト側でのアクセス制御ミスが起きにくい。並列実行は所有者がはっきりしたオブジェクトを並列処理することで実現。

Aptos は Move の Resource モデルを採用し、トークンは FungibleAsset / Object<T> で表現される。Aptos Framework の primary_fungible_store は ERC-20 に近い抽象化を提供しつつ、Move の型安全性を維持する。

非 EVM トークンの設計比較

チェーンモデル特徴主な用途
Solana SPLAccount 分離モデル高 TPS・低費用・並列化DeFi・Meme コイン・NFT
Bitcoin OrdinalsUTXO 追跡 + witnessBitcoin ネイティブ NFTコレクティブル・ゲーム
Bitcoin RunesUTXO + OP_RETURNUTXO 効率的 FTBitcoin FT
Cosmos IBCSDK モジュール + IBCクロスチェーンマルチチェーン DeFi
SuiMove オブジェクト型安全・並列所有権ゲーム・高速 DeFi
AptosMove リソース型安全・Aptos FrameworkDeFi・NFT

各チェーンのトークンモデルはそのコンセンサス設計・実行モデル・TPS 目標を反映しており、EVM との互換性よりも自チェーンの強みを最大化する方向に収束している。ブリッジや wrapped 資産(tech-232 参照)はこれらの異種トークンを相互接続する手段として機能する。

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