DeFi Lending と CDP(過剰担保貸借と合成資産)

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Created: 2026-06-07 Updated:

DeFi の過剰担保貸借プロトコルと CDP(担保付き債務ポジション)を解説。Aave v3(GHO)・Compound v3・MakerDAO→Sky(DAI/USDS)・Morpho Blue・Liquity(LUSD 無利子)の仕組みと金利モデル・清算設計を体系化する。

DeFi Lending と CDP(過剰担保貸借と合成資産)

DeFi の貸借プロトコルは、担保としてトークンを預け入れることで別のトークンを借り入れる「過剰担保貸借(Over-collateralized Lending)」を基本とする。信用審査・KYC が不要で、担保価値が借入残高を上回る限り誰でも利用できる点が TradFi(伝統金融)と根本的に異なる。**CDP(Collateralized Debt Position / 担保付き債務ポジション)**はこのモデルのうち、担保から独自のステーブルコインを鋳造する仕組みを指す。本記事では主要プロトコルの設計を体系化する。情報カットオフ ~2025-08、confidence: medium 固定(2026-06 時点での外部再検証は未実施)。

過剰担保貸借の基本構造

プロセスは次の通りだ。①ユーザーが担保(例:ETH)をプロトコルのスマートコントラクトに預け入れる。②担保評価額に対する**担保率(Collateral Factor / LTV: Loan-to-Value)に応じた上限まで別のトークン(例:USDC)を借り入れる。③借入残高には借入金利(Borrow Rate)が継続的に加算される。④担保価格の下落などにより担保率が清算しきい値(Liquidation Threshold)**を下回ると、サードパーティの清算ボットが担保の一部を市場価格+ボーナスで買い取り(清算)、借入残高を解消する。

金利モデルは需要と供給で自動調整される。資金利用率(利用中資産 ÷ 供給総量)が上がるほど借入金利が上昇し(モデルにより線形または屈曲点付き折れ線)、貸出金利は利用率 × 借入金利 × (1 - プロトコル手数料率)で決まる。これにより利用率が過度に高くなると借入コストが高まり、資金が流入して均衡に向かう自律的市場が形成される。

Aave v3 と GHO

Aave は最大の DeFi 貸借プロトコルの一つで、v1(2017 年)→v2(2020 年)→v3(2022 年)と進化してきた。v3 の主要革新は Efficiency Mode(eMode)Isolation ModePortalだ。

eMode(高効率モード)は高度に相関した資産ペア(例:ETH と stETH)に対して通常より高い担保率を許可するモードで、同カテゴリ内での借入では最大 95% LTV に達するケースもある。Isolation Mode は新規に追加された担保資産を、指定された少数のステーブルコインにのみ借入を許可するリスク管理モードだ。Portal はクロスチェーン流動性移動を可能にするブリッジ統合機能である。

2023 年には Aave 独自の GRC (ガバナンス制御型ステーブルコイン)としてGHO(ジーホー)が導入された。GHO は CDP 方式で Aave 担保から鋳造でき、Aave ステーカー(stkAAVE 保有者)は GHO 借入金利の割引を受けられる。GHO の金利収益はすべて Aave ガバナンス DAO に帰属する。

Compound v3

Compoundは Aave と並ぶ草分け的貸借プロトコルだ。v1・v2 は Aave と類似した多資産プール型だったが、**Compound v3(Comet)**では設計を大幅に刷新した。各マーケットは「1 つの借入可能資産(例:USDC)」と「複数の担保資産(ETH・WBTC など)」の分離構造になり、借入可能資産間でリスクが波及しないよう分断された。これにより安全性は高まるが、複数種類の資産を同時に借りるユースケースには不向きとなる。

COMP トークンは DeFi Summer のきっかけとなった流動性マイニングの原点であり、現在もガバナンストークンとして機能する。

MakerDAO → Sky(DAI と USDS)

MakerDAO は DeFi 最古の CDP プロトコルの一つで、担保(ETH・WBTC・stETH・RWA など)からDAIステーブルコインを鋳造する仕組みを提供してきた。2024 年に MakerDAO はSkyへとブランドを刷新し、DAI はUSDS(旧 USDS は DAI の新名称)へ段階的に移行を進めている。

Maker の CDP は「Vault」と呼ばれるポジションで管理される。ETH を担保に DAI を借り入れる場合、担保率は 170%(DAI/ETH レシオ 150% + バッファ)程度が一般的だ。清算時に担保がオークション(MakerDAO の「ちょうどよい価格」を探す Dutch Auction 方式)で処分される。

重要な革新はRWA(Real World Asset)統合で、2022〜2024 年に MakerDAO は Monetalis Clydesdale・BlockTower Credit などを通じて米国債・CLO など実資産をオンチェーン担保として採り入れ、DAI の担保基盤を多様化した。これにより DAI の安定性を高め、プロトコル収益(Stability Fee)を連邦準備制度の利上げサイクルと連動させることができた。

**DSR(DAI Savings Rate / Sky Savings Rate)**は DAI/USDS を預けるだけで得られる利回りで、RWA 収益の一部がユーザーに還元される。2024〜2025 年時点では年利 5〜8% 前後で推移し、利回り付きステーブルコインの代表格となっている。

Morpho:モジュラー貸借

Morphoは「モジュラー貸借プロトコル」として 2022 年に登場し、DeFi 貸借の設計を刷新した。

Morpho Optimizer(初期)は Aave と Compound の上に P2P マッチングレイヤーを追加し、双方のプロトコルよりも良いレートでユーザーをマッチングする「最適化レイヤー」として機能した。アンマッチのポジションはベースプロトコル(Aave/Compound)にフォールバックするため、ユーザーはプロトコルリスクを引き受けながらもより良いレートを得られた。

Morpho Blue(2023 年末)は完全に独自設計の貸借プリミティブで、最小限のコアコントラクトと「マーケット」という独立したリスクアイソレーション単位から成る。各マーケットは「担保資産・借入資産・オラクル・清算 LTV・金利カーブ」の 5 パラメータで定義され、誰でも許可なく新しいマーケットを作成できる。リスク管理はメタモーフィック Vault(キュレーターが複数マーケットへの資金配分を管理する ERC-4626 Vault)が担い、ユーザーは信頼するキュレーターを選ぶことでリスク管理を委任できる。

Liquity:無利子 CDP

Liquityは 2021 年にリリースされた独自の CDP プロトコルで、ETH を担保にLUSD(Dollar-pegged stablecoin)を無利子で借り入れられる点が最大の特徴だ。利子ゼロを実現するために以下の設計上の工夫がある。

一回限りの借入手数料(通常 0.5〜5%)が鋳造時に徴収され、これが将来の金利の代わりとなる。清算しきい値は 110% という DeFi 最低水準の担保率で、清算時は「安定プール(Stability Pool)」の LUSD が自動的に担保と交換される。LUSD の価格ペグは「1 LUSD ≤ 1.1 USD(鋳造上限)かつ 1 LUSD ≥ 0.99 USD(リデンプション下限)」のハードバウンドで保証される。ガバナンストークンを持たず、スマートコントラクトを後から変更できない(イミュータブル設計)点で、DeFi 屈指の「コードが法律」哲学を体現するプロトコルだ。

2024 年に登場したLiquity v2は多担保対応(stETH なども担保可)・改善された金利モデル・ユーザー指定の借入金利を導入し、v1 の設計哲学を保ちつつ柔軟性を高めた。

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