ステーブルコイン(分類・仕組み・2025 年の状況)

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Created: 2026-06-07 Updated:

ステーブルコインを 4 分類(オンチェーン担保・オフチェーン担保・合成/デルタ中立・RWA 担保)で体系化。UST/Terra 崩壊の構造分析、2025 年利回り付きステーブル 200 億ドル超(sUSDe/sUSDS)、GENIUS Act 成立を含む最新状況を解説。

ステーブルコイン(分類・仕組み・2025 年の状況)

ステーブルコインは米ドルなどの法定通貨・コモディティ・その他資産に価格を連動(ペッグ)させたトークンであり、DeFi エコシステムの基軸通貨として機能する。ブロックチェーン上で動くドルを持つことで、検閲耐性・プログラマビリティ・24/7 即時決済を法定通貨単位で享受できる。本記事はステーブルコインを 4 分類で体系化し、アルゴリズム型崩壊の構造分析と 2025 年の規制・市場動向を解説する。情報カットオフ ~2025-08、confidence: medium 固定(2026-06 時点での外部再検証は未実施)。

分類 1:オンチェーン担保型

オンチェーン資産(主に暗号資産)を担保に、スマートコントラクトが自律的にステーブルコインを発行する方式だ。担保は公開オンチェーンで誰でも検証できるが、担保資産自体の価格変動リスクを吸収するために過剰担保が必要となる。

**DAI / USDS(MakerDAO / Sky)**は DeFi 最古参のオンチェーン担保型ステーブルコインだ。ETH・WBTC・stETH・RWA などを担保に CDP(担保付き債務ポジション)で鋳造される。2023 年以降は米国債連動 RWA を大量組み込み、担保の分散化と利回り獲得(DSR / SSR を通じた還元)を実現した。2024 年の Sky リブランドでトークン名が USDS へ移行しつつある。

**crvUSD(Curve Finance)**は 2023 年に登場した Curve 独自の CDP ステーブルコインで、**LLAMMA(Lending-Liquidating AMM Algorithm)**という革新的な清算メカニズムを持つ。通常の清算が担保価格がしきい値を下回ると一括処分するのに対し、LLAMMA は担保を徐々に(連続的に)ステーブルコインに換えていく「ソフト清算」を採用し、急激な相場変動でも担保喪失を最小化する設計だ。

**LUSD(Liquity)**は ETH のみを担保として受け付ける最もシンプルなオンチェーン担保型で、無利子借入とイミュータブルなスマートコントラクトが特徴(tech-216 参照)。

分類 2:オフチェーン担保型(法定通貨担保)

中央発行者が法定通貨・米国債などのオフチェーン資産を準備金として保有し、1:1 でトークンを発行する方式だ。信頼性は発行者の信用と準備金監査に依存する。

**USDT(Tether)**は最大の流通量を持つステーブルコインで、2014 年の登場以来グローバルな OTC 取引・DeFi 担保・クロスボーダー決済の基軸となっている。準備金の透明性に関する懸念が長年あったが、Tether の外部監査公開により信頼性が高まった。MiCA の EMT(電子マネートークン)規制への非準拠を理由に EU の一部取引所でデリスティングされた(2024 年)。

**USDC(Circle)**は米国規制に準拠した発行体(Circle Internet Financial)が運営し、MiCA 準拠・SEC および各州 MTL ライセンス保有・月次準備金証明公開によって機関投資家・DeFi プロトコルから信頼される。2025 年には **PYUSD(PayPal USD)**も登場し、PayPal ユーザー向けの大規模な流通路が加わった。

分類 3:合成型・デルタ中立型

担保を特定の戦略的ポジションで保有し、オフチェーン準備金なしに価格安定を達成しようとする設計だ。アルゴリズム型のうち市場中立的な(デルタ中立)ヘッジ戦略でドルペッグを維持するものがここに分類される。

**USDe(Ethena)**は 2024 年に登場した合成ドルで、デルタ中立戦略によってペッグを維持する。ETH・stETH・BTC などの現物(スポット)を保有しつつ、対応する等量のショートポジションを Perpetual DEX で建てることで、価格変動(デルタ)をゼロに近づける。stETH のステーキング利回り(年利 3〜5%)と Perpetual DEX のファンディングレート(強気相場では正方向=ロング保有者がショート保有者に支払う)の合計が USDe の利回り源泉となる。

USDe を staking することで得られる**sUSDe(Staked USDe)**は利回り付きステーブルコインとして機能し、2025 年時点で時価総額は 50〜70 億ドル規模に達した。リスクは「負のファンディングレート期」(弱気相場でショート側が手数料を払う局面)と、Perpetual DEX カウンターパーティリスクである。

**USDtb(Ethena の RWA 担保型)**は USDe の姉妹トークンで、BlackRock の BUIDL トークン化ファンド(米国債を原資産とする)を担保として使用する。低リスク・安定的な利回りを求めるユーザー向けの選択肢として 2024 年末に登場した。

アルゴリズム型と崩壊(UST / Terra)

純粋なアルゴリズム型ステーブルコインは担保なしに裁定メカニズムでペッグを維持しようとする設計で、最大の失敗事例が**UST(TerraUSD)と LUNA(Terra)の崩壊(2022 年 5 月)**だ(詳細は tech-201 参照)。

UST のペッグ維持メカニズムは「1 UST はいつでも 1 ドル相当の LUNA と交換できる」という裁定機会だった。UST 価格が 1 ドルを下回ると、裁定者が安い UST を買って LUNA と交換し UST を焼却することでペッグを回復するはずだった。

2022 年 5 月に大規模な UST 売りが起きると LUNA 価格が急落し、LUNA を UST に交換する需要が生まれ LUNA 供給が爆発的に増加(ハイパーインフレーション)し、さらに LUNA 価格が下落するという「死亡螺旋(Death Spiral)」が発生した。総額 400 億ドル超が消失し、DeFi の信頼危機を招いた。

この崩壊は「バックストップのない自己参照ペッグ」の設計上の致命的欠陥を示しており、以後のステーブルコイン設計では担保の外部性(暗号資産以外の資産・RWA・デルタ中立ヘッジ)を組み込む方向へシフトした。

2025 年の状況:利回り付きステーブルと GENIUS Act

**利回り付きステーブルコイン(Yield-Bearing Stablecoins)**の台頭が 2024〜2025 年の最大トレンドの一つだ。保有するだけで年利が得られる設計で、2025 年時点で sUSDe・sUSDS・sDAI など主要 yield-bearing stablecoin の時価総額合計は 200 億ドルを超えた。利回りの源泉はそれぞれ異なり、stETH ステーキング+ファンディングレート(Ethena)・米国債 RWA 収益(Sky/MakerDAO)・CDP stability fee 収益(DAI Savings Rate)などが組み合わさる。

**GENIUS Act(Guiding and Establishing National Innovation for US Stablecoins Act)**は 2025 年 7 月に米国で署名された法律で、**ペイメントステーブルコイン(Payment Stablecoin)**の発行と運営に関する連邦規制枠組みを初めて法定化した。主要要件は①1:1 準備金(米国債・現金・中銀預金)の保有義務、②月次準備金の監査・公開義務、③銀行・信託会社・ノンバンク発行体の登録制度、④FRB・OCC による監督、だ。

GENIUS Act は純粋にオフチェーン担保型のステーブルコインを主な規制対象とし、DAI などのオンチェーン担保型については「ペイメントステーブルコインの定義に該当しない可能性」の含みを残した。しかし DeFi プロトコルが GENIUS Act 準拠ステーブルコインを参照する場合の AML/KYC 連鎖適用は未解決の論点であり、2026 年以降の規制解釈が DeFi 設計に大きく影響するとみられる。

種類代表例担保利回り規制適合性
オンチェーン担保DAI, crvUSD, LUSD暗号資産/RWADSR 経由で可能グレーゾーン
オフチェーン担保USDC, USDT, PYUSD現金/米国債なし(発行体が運用)GENIUS Act 主対象
デルタ中立合成USDe, USDtbETH ショートヘッジ/RWAsUSDe で高利回りグレーゾーン
アルゴリズム型UST(崩壊済み)なし高利回り(崩壊前)規制当局が警戒

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