利回り付き資産(Yield-Bearing Assets)
利回り付き資産の全体像。利回り付きステーブルコイン(sUSDe・sUSDS・USDtb)が 2025 年で $20B 超に成長、デルタ中立戦略・RWA 担保・ステーキング派生利回りの仕組み、ポイント・エアドロップ設計を解説。
article technology ja 利回り付き資産の全体像。利回り付きステーブルコイン(sUSDe・sUSDS・USDtb)が 2025 年で $20B 超に成長、デルタ中立戦略・RWA 担保・ステーキング派生利回りの仕組み、ポイント・エアドロップ設計を解説。利回り付き資産(sUSDe・sUSDS・USDtb・ステーキング派生利回り)
利回り付き資産(Yield-Bearing Assets)は保有するだけで利回りが蓄積するトークンであり、2024〜2025 年にかけて DeFi の主要カテゴリとして急拡大した。ステーブルコイン本体に利回りを組み込む「利回り付きステーブルコイン」(sUSDe・sUSDS・USDtb 等)が 2025 年時点で時価総額 $20B を超え、ステーキング・リステーキングから派生する LST/LRT ベースの利回り、ポイント・エアドロップ経済設計が加わり、オンチェーン金融の「収益源」の多様化が進んでいる。ステーブルコイン本体の分類(USDT・USDC・DAI 等)は tech-217 で詳述しており、本記事はそこから「利回り」を切り出した派生視点で構成する。情報カットオフ ~2025-08、confidence: medium 固定(2026-06 時点での外部再検証は未実施)。
利回り付きステーブルコインの台頭
sUSDe(Ethena / Staked USDe)
Ethena が提供する USDe は「デルタ中立型合成ドル」であり、sUSDe はその利回り付きラッパーである。
USDe の担保メカニズムは以下の通りだ。ETH(または stETH・weETH など LST/LRT)をスポット買いで保有し、同時に同量の ETH 永久先物を CEX(Binance・Bybit・OKX・Deribit 等)でショートする。スポット + ショートにより、ETH 価格変動に対してネット露出がゼロ(デルタ中立)になり、ドルペッグを維持する。
USDe の利回り源は 2 つある。第一に LST/LRT から発生するステーキング利回り(ETH ステーキング 年率 ~3〜5%)、第二に永久先物のファンディングレート(ロング側がショート側に支払うコスト:強気相場では ロングが多いため年率 10〜20% 規模になることも)。
sUSDe は USDe を Ethena プロトコルにステークした際に受け取る利回り付きトークン(ERC-4626 準拠)。残高は変わらず価値が上昇する「積み上がり型」で、2024 年の強気相場では一時年率 30% を超える利回りを実現した。2025 年時点での時価総額はステーブルコインカテゴリ内でトップクラスの規模に成長。
リスクとして、ファンディングレートが負転(ショート側が多い弱気相場)になると利回りが低下・マイナスになる可能性がある。Ethena は保険ファンド(Insurance Fund)を設けてこの局面に対応するが、極端な弱気相場での持続性は保証されない。また CEX への資産預託(デリバティブポジション維持のため)は CEX リスク(破綻・ハック・規制)を含む。
sUSDS(Sky Protocol / 旧 MakerDAO)
Sky Protocol(旧 MakerDAO が 2024 年にブランドリブランディング)の sUSDS(Staked USDS)は DAI 後継ステーブルコイン USDS にステーキング利回りを組み込む仕組みである。
USDS(旧 DAI の改名 + 新機能版)は Sky モジュール(Sky Savings Rate:SSR)に預けることで sUSDS を受け取り、プロトコル収益(米国債担保の RWA 利回り・Spark ローン金利・清算手数料)から分配される利回りが蓄積する。ERC-4626 準拠の積み上がり型トークン。
利回りは DAI Savings Rate(DSR)から引き継ぎ、米国金利環境を反映して調整される。2024〜2025 年の米国高金利期は RWA(米国債)担保から安定した利回りが供給された。安全性の面では、MakerDAO/Sky は最も長期間(2017 年〜)稼働してきた DeFi プロトコルの一つで、複数の市場下落を生き延びた実績を持つ。
USDtb(Ethena / RWA 担保型)
USDtb は Ethena が sUSDe のデルタ中立戦略とは別に提供するRWA 担保型ステーブルコインである。BlackRock の BUIDL(トークン化 MMF)を主要担保とし、ファンディングレートが負転した場合の「逃げ場」として USDtb に流入させ、Ethena プロトコル全体の安定性を高める設計になっている。
USDtb は RWA の利回り(米国債相当、年率 ~4〜5%)を保有者に還元する。DeFi での担保として Morpho・Aave に受け入れられており、BUIDL が介在することで TradFi の機関資金と DeFi の接点を形成する。
ステーキング派生の利回り
PoS チェーンのステーキング報酬はネイティブトークンで付与されるが、LST/LRT を通じてオンチェーンの利回り付き資産として流通する。
ETH ステーキング利回り(stETH / wstETH via Lido)は Ethereum のインフレ発行+トランザクション tip から算出される。2025 年時点で年率 ~3〜4%。PoS の validator 数増加に伴い、発行ベースの利回りは長期的に低下傾向にある。
Restaking 利回り(weETH via ether.fi + EigenLayer)はステーキング利回りに加え、AVS(Actively Validated Services)がセキュリティ対価として支払うトークンを上乗せする。EigenLayer のポイントプログラムがエアドロップ期待から資金を集め、2024 年に急拡大した。AVS の実稼働・スラッシュリスクが具体化するにつれ、LRT の設計の精度が問われる段階に入った。
Solana の jitoSOLはバリデータの MEV 収益の一部をステーカーに還元するため、通常の SOL staking(年率 ~6〜7%)より高い利回りを実現する。Jito-Solana クライアントが MEV オークション収益を Block Engine 経由で集め、jitoSOL 保有者に分配する設計。
ポイント・エアドロップ経済設計
2024〜2025 年にかけて、多くの DeFi プロトコルが TGE(Token Generation Event / トークン生成イベント)前に「ポイント」プログラムを使って流動性を集める手法が標準化した。
ポイントの機能:プロトコルへの流動性提供・取引・推薦に応じてポイントを付与し、TGE 時にガバナンストークンをエアドロップする将来的な権利として機能させる。実質的にはトークンの「先物」であり、将来価値への期待が資本吸引力となる。Ethena(ENA トークン)・EigenLayer(EIGEN トークン)・Blast・Hyperliquid など多数のプロトコルがこのモデルを採用した。
課題として、エアドロップ受領後に流動性が一斉に引き上げられる「エアドロップダンプ」現象が多くのプロトコルで観察された。長期的な保有インセンティブ設計(ベスティング・ロックアップ)・エアドロップ受取者のフィルタリング(シビル対策)・ポイントプログラムの透明性が課題として浮上し、より精緻なトークンエコノミクス設計が求められるようになっている。
利回り構造の全体比較
| 資産 | 利回り源 | 2025 時点規模 | 主なリスク |
|---|---|---|---|
| sUSDe | ETH ステーキング + 永久先物ファンディング | 数十億ドル規模 | ファンディングレート負転・CEX リスク |
| sUSDS | RWA(米国債)+ Spark ローン金利 | 数十億ドル規模 | 金利低下・担保崩壊 |
| USDtb | BUIDL(米国債 MMF)利回り | 数億〜十億ドル規模 | RWA 解約リスク・BUIDL 流動性 |
| stETH | Ethereum PoS 発行 + tip | ~1000 万 ETH 担保 | バリデータスラッシュ |
| weETH | stETH + EigenLayer AVS 報酬 | 数十億ドル規模 | AVS スラッシュ・重複リスク |
| jitoSOL | SOL PoS + Jito MEV | 数億 SOL 規模 | Solana ネットワークリスク |
利回り付き資産の多様化は DeFi の成熟を示す一方で、各資産の利回り源・リスク・相関を正確に把握したうえで組み合わせる高度なリスク管理が必要になっている。ステーブルコイン本体の分類・規制・崩壊事例については tech-217 を参照のこと。
Backlinks
- has_parts トークン・NFT・資産の全体像