Wrapped 資産とデリバティブ資産

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Created: 2026-06-07 Updated:

Wrapped 資産の仕組みと主要例(WBTC・stETH・weETH)、ブリッジ wrapped 資産のリスク、LST/LRT の生成メカニズム、担保としての活用方法を解説。EVM 間・異種チェーン間の資産移動インフラ。

Wrapped 資産とデリバティブ資産(WBTC・LST・LRT・ブリッジ wrapped)

Wrapped 資産は、ある資産を別のブロックチェーン・プロトコル上で利用可能にするために「ラップ(包む)」する仕組みで生まれるトークンである。元の資産(BTC・ETH・SOL・現実世界の資産など)をロックし、その証明として別チェーン・別プロトコル上に 1:1 ペッグの新トークンを発行する。Liquid Staking Token(LST)・Liquid Restaking Token(LRT)もこのカテゴリに属し、ステーキングした ETH を「流動化」させる派生資産として機能する。本記事はこれらの仕組み・リスク・担保としての活用を整理する。情報カットオフ ~2025-08、confidence: medium 固定(2026-06 時点での外部再検証は未実施)。

Wrapped BTC(WBTC)

WBTC(Wrapped Bitcoin)は EVM 上で使える Bitcoin 担保トークンの最大規模の実装である。BitGo・Kyber・Ren が 2019 年に立ち上げた。

仕組みは以下の通りである。ユーザーは BTC を KYC 済みのマーチャントに送金し、マーチャントがカストディアン(BitGo)に BTC を入金する。カストディアン(BitGo)が ERC-20 トークン WBTC を Mint してユーザーに送付する。逆方向(WBTC → BTC)は Burn してカストディアンが BTC を返却する。

信頼モデルの問題として、WBTC は中央集権的なカストディアン(BitGo)への信頼を必要とする。2023 年 8 月に BitGo が WBTC のカストディアンを変更する計画(Justin Sun 関連企業 BiT Global への移管)を発表したことで、DeFi コミュニティが中央集権リスクへの懸念を強め、Aave は WBTC の担保受け入れ比率を引き下げた。

代替として、tBTC(Threshold Network、分散型マルチシグ保管)・renBTC(廃止)・cbBTC(Coinbase が発行、2024 年)が存在する。Solana では sBTC(Stacks エコシステム)が Bitcoin 担保 wrapped トークンを提供する。

Liquid Staking Token(LST)

LST(Liquid Staking Token)は Proof of Stake チェーンで ETH 等をステーキングした際の「流動性レシート」として機能するトークンである。

Ethereum は 2022 年 9 月の The Merge で PoW から PoS に移行したが、ステーキングには 32 ETH の最低要件と「引き出しロック」が課されていた。この問題を解決したのが Liquid Staking プロトコルである。

Lido Finance(stETH)

Lido Finance は最大の Liquid Staking プロトコルで、stETH(staked ETH)を発行する。ユーザーが ETH を Lido に預けると、毎日リベース(stETH 残高が自動増加)する形でステーキング報酬が還元される。2025 年時点で Lido の staked ETH は ~1000 万 ETH 規模で、Ethereum PoS の バリデータセット中で最大のシェアを持つ。DeFi での担保として広く受け入れられており、Aave・Curve・Compound で使用可能。

wstETH(Wrapped stETH)はリベースを排除した「積み上がり型」の LST バリアントで、残高は変わらず価値が上昇する設計。ERC-4626 的な share トークンとしてブリッジに適している。

Rocket Pool(rETH)

Rocket Pool は分散型 Liquid Staking プロトコルで、「Node Operator」が 8 ETH + RPL 担保でミニプールに参加する設計。中央集権リスクを分散化した代替 LST として DeFi ユーザーに支持されている。

Solana の mSOL・jitoSOL

Solana にも同様の LST(Marinade Finance の mSOL・Jito の jitoSOL)が存在する。jitoSOL は MEV 収益の一部をステーカーに還元するため、通常の staking より高利回りを提供する。

Liquid Restaking Token(LRT)

LRT(Liquid Restaking Token)は EigenLayer の「Restaking」概念から生まれた派生資産である。Restaking は Ethereum の PoS セキュリティ(staked ETH)を他のプロトコル(AVS:Actively Validated Services)のセキュリティに再利用する仕組みで、2024 年に EigenLayer が本格展開した。

weETH(Wrapped eETH)は ether.fi が提供する Liquid Restaking Token の最大規模の実装である。ether.fi は Ethereum バリデータの鍵管理をノード委任し、ステーキング報酬に加えて EigenLayer のポイント・AVS 報酬を組み合わせた利回りを提供する。weETH は DeFi プロトコルで担保として広く受け入れられ、2025 年時点で TVL は数十億ドル規模。

eETH/weETH・rsETH・ezETH・pufETH など複数の LRT が競合しており、それぞれ AVS の選択・スラッシュリスク管理・ポイント配分が異なる。LRT はステーキング + Restaking + DeFi 活用を組み合わせた「スタック利回り」を提供するが、スラッシュリスクが二重(Ethereum PoS + AVS)になるため、リスク評価が複雑になる。

ブリッジ Wrapped 資産

クロスチェーンブリッジは一方のチェーンで資産をロックし、他方のチェーンで wrapped 版を Mint する仕組みで異なるブロックチェーン間の資産移動を実現する。

主要ブリッジと wrapped 資産の例

  • Ethereum → Solana:Wormhole の wrapped ETH(wETH on Solana)
  • Ethereum → Arbitrum:公式 Arbitrum ブリッジの ETH(ネイティブ)・ERC-20 トークン
  • Bitcoin → Ethereum:WBTC・tBTC(前述)

ブリッジリスクは DeFi の最大の攻撃面の 1 つである。2022 年に Wormhole(320M)・Ronin320M)・Ronin(625M)・Nomad($190M)と、ブリッジハックが相次いだ。ロックされた資産を保持するスマートコントラクトが攻撃対象となり、Mint 側の wrapped トークンが担保を失う「脱ペッグ」が起きる。信頼モデルの観点から、楽観的ブリッジ(Optimistic Rollup の公式ブリッジ)・ZK 証明ブリッジ・マルチシグブリッジ・SGX 使用ブリッジではリスクプロファイルが大きく異なる。

Wrapped 資産の担保としての活用

Wrapped 資産・LST・LRT の主要な活用先は DeFi の担保ポジションである。

資産担保先の例活用パターン
WBTCAave・MakerDAO・MorphoBTC を担保に USDC/DAI 借入
stETH / wstETHAave・Morpho・Curvestaking 利回りを受けながら追加レバレッジ
weETHAave・Morpho・GearboxRestaking 利回り + DeFi 借入の複合活用
cbBTCBase エコシステム DeFiCoinbase 経由の Bitcoin DeFi

担保活用の典型戦略は、LST/LRT を Lending プロトコルに担保として預け、ステーブルコインを借り入れて更に LST/LRT を購入するレバレッジドステーキング(ループ戦略)である。利回りが借入金利を上回る場合に正の利ざやが生まれるが、価格変動・清算リスク・スラッシュリスクを複合して管理する必要がある。

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