トランス

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Created: 2026-06-15 Updated:

電磁誘導を利用して電圧・電流を変換するトランスを解説。鉄心・コイル構造、巻数比による電圧変換則、鉄心の形状と材質、理想トランスと実トランスの違いを説明する。

トランス — 電磁誘導による電圧変換・巻数比・鉄心構造

トランス(変圧器、Transformer)は電磁誘導の原理を利用して交流電圧・電流を変換する受動素子であり、発電所から家庭への電力伝送、AC アダプタ、オーディオ機器、絶縁回路など広範な用途で用いられる。直流では動作せず交流(または時間変化する磁束)にのみ応答する点が本質的な制約である。情報カットオフ 〜2025-08、confidence: medium 固定。

トランスの基本概念と動作原理

トランスは 2 組以上のコイル(巻線)を共通の磁気回路(鉄心)に巻き付けた構造を持つ。

動作の本質は電磁誘導(tech-330)にある。一次コイルに交流電圧を印加すると時間変化する磁束が鉄心を通じて生成され、二次コイルにファラデーの法則に従う起電力が誘起される。

巻数 N・磁束 Phi の関係:誘起起電力 e は巻数 N と磁束変化率 d(Phi)/dt に比例する(e = -N * d(Phi)/dt)。一次側の磁束変化率が一定なら、各コイルの電圧は巻数に比例する。

理想トランス(巻線抵抗・漏れ磁束・鉄損を無視)では、一次電圧 V1・二次電圧 V2 と一次巻数 N1・二次巻数 N2 の間に次の関係が成立する。

  • 電圧比 = 巻数比:V1 / V2 = N1 / N2 = a(巻数比)
  • 電流比は逆数:I1 / I2 = N2 / N1 = 1 / a

昇圧トランスは N2 > N1(a < 1)、降圧トランスは N2 < N1(a > 1)である。

構造:鉄心・一次コイル・二次コイル

トランスの物理的構成要素は 3 つに大別される。

**鉄心(磁気コア)**は磁束を効率よく導くための磁路を形成する。透磁率の高い軟磁性材料を使用し、磁束の閉ループを形成することで一次→二次への磁気的結合を強める(磁気回路の役割は tech-326 の磁場概念に基づく)。

**一次コイル(Primary Winding)**は電源側に接続されるコイルである。交流電圧を印加すると電流が流れ、磁束を生成する起磁力(F = N * I)を生じる。

**二次コイル(Secondary Winding)**は負荷側に接続されるコイルである。鉄心を伝わった磁束の変化により起電力が誘起され、負荷に電力を供給する。複数の二次巻線を持つ多巻線トランスも一般的で、異なる電圧を同時に供給できる。

鉄心の形状と材質

形状は磁気回路設計に直接影響する。代表的な構造を以下に示す。

形状特徴用途
E-I コア組み立て容易・コスト低小型電源・スイッチング電源
E-E コア対称磁気回路・低漏れ磁束中電力スイッチング電源
トロイダル(環状)漏れ磁束極小・低ノイズオーディオ・精密計測
U-I コア大型・大電力電力系統用変圧器

材質は周波数・損失要件で選択が変わる。

材質鉄損適用周波数代表用途
電磁鋼板(けい素鋼)50/60 Hz商用変圧器
アモルファス合金数 kHz まで高効率変圧器
フェライト極低数十 kHz〜数 MHzSMPS・高周波トランス
ナノクリスタル極低〜100 kHz高性能フィルタ・インダクタ

商用電力用(50/60 Hz)には珪素鋼板(電磁鋼板)を薄くプレスして積層したコアが標準的に使われる。積層することで渦電流損(tech-351)を低減する。スイッチング電源(数十 kHz〜)にはフェライトコアが不可欠で、高周波での鉄損が格段に小さい。

実トランスと理想トランスの差異

実際のトランスは以下の要因により理想特性から乖離する。

銅損(巻線抵抗損):コイルの直流抵抗 R による熱損失(P = I^2 * R)。導体断面積を大きくすることで低減できるが、重量・コストとトレードオフになる。

漏れ磁束:一次コイルが生成した磁束の一部が鉄心を通らず空気中に散逸する。漏れインダクタンスとして等価回路に表れ、負荷時の電圧降下・位相ずれの原因となる。

鉄損:鉄心内で生じるエネルギー損失(ヒステリシス損 + 渦電流損)。詳細は損失機構(tech-351)で扱う。

励磁電流(無負荷電流):二次側が無負荷でも一次側には鉄心の磁化に必要な励磁電流が流れる。理想トランスではゼロだが、実トランスでは全負荷電流の 1〜10% 程度が典型値。

情報カットオフ 〜2025-08、confidence: medium 固定。

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